防水塗装工事にはどんな種類がある？それぞれの特徴について解説
2024/09/26
建物の屋上やベランダが劣化した時には「防水塗装工事」で改修することをおすすめします。防水塗装工事は単なる塗装ではなく、防水機能を持たせた塗装工事です。
本記事では、防水塗装工事の種類と施工方法について解説しますので、建物の外装リフォームをお考えの方はぜひ参考にしてください。
防水工事と塗装工事の違いとは？
まずは「防水工事」と「塗装工事」の違いについて整理してみます。
防水工事
防水工事とは、雨水が建物の内部に浸入することを防止する工事です。
雨水が内部に浸入すると雨漏りを引き起こして内部が濡れるだけでなく、大切な構造躯体を腐食させてしまいます。
木造の場合は柱や土台が濡れた状態が続くと、腐朽菌が発生して木材が腐食するだけでなく、シロアリが住み着いて食害を受けることもあります。鉄骨造の場合でも鉄材が錆びてしまい、寿命を大幅に縮めてしまうでしょう。
雨水を直接受ける屋上やベランダには、漏水を防ぐために新築時に厚く強固な防水膜を形成する防水工事が施されています。防水膜は紫外線の影響や躯体の動きによって徐々に劣化し、一般的には10〜15年程度でひび割れたり穴が開いてしまい、防水機能が失われていきます。
塗装工事
塗装工事は、屋根や外壁に使用されている材料の劣化防止や美観の維持のために実施する工事です。
屋根や外壁に多く使用されているセメントや鉄を基材とする製品は、表面の塗装によって性能品質を維持しています。表面塗装が紫外線や長年の風雨による損傷で劣化し失われていくと、表面が色褪せて美観が失われるだけでなく、基材が吸水して腐食したり鉄の場合は赤錆が発生して穴が開くなど、やがては建物を雨風から守る機能が失われてしまいます。
表面に使用されている塗料の種類によりますが、屋根や外壁は10〜20年ごとに塗り替えをするのが一般的なメンテンナンスサイクルです。
防水塗装工事
防水塗装工事は、前述の防水工事と塗装工事を組み合わせた言葉になりますが、塗装業界では「塗膜防水工事」と呼ぶことが一般的です。これは、既存の防水の上に塗料で幕を形成する防止改修工事のことを指し、防水リフォームとして最も多く採用される工法です。
次章では防水塗装工事についてより詳しく解説します。
防水塗装工事の種類
防水塗装工事には、大きく分けて次の2つの工法があります。
✅ウレタン防水工事
✅FRP防水工事
それぞれの特徴について詳しく解説します。
ウレタン防水工事
ウレタン防水工事は、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて化学反応によって硬化させることで、継ぎ目のない防水層を形成する工法です。下地を選ばず、複雑な形状の場所にも対応できるため汎用性の高い工法です。
【ウレタン防水のメリット】
・比較的安価で、工期も短い
・柔軟性が高く、建物の動きに追従しやすい
・複雑な形状の場所にも施工できる
【ウレタン防水のデメリット】
・紫外線に弱く、定期的なトップコートの塗り替えが必要
・下地処理が甘いと施工不良によるトラブルが発生しやすい
・耐摩耗性が低く、歩行による損傷を受けやすい
FRP防水工事
FRP防水工事は、ガラス繊維を樹脂で固めた繊維強化プラスチックで防水層を形成する工法です。軽量で耐久性、耐衝撃性、耐摩耗性に優れているため、建築物の防水だけでなく、船舶や自動車など、さまざまな分野で利用されています。
【FRP防水のメリット】
・耐久性、耐摩耗性に優れている
・速乾性が高く、工期が短い
・強度が高く、衝撃に強い
【FRP防水のデメリット】
・ウレタン防水に比べて高価
・施工が複雑で、専門的な技術が必要
・柔軟性が低く、建物の動きに追従しにくい
ウレタン防水工事の工法と施工手順
ウレタン防水工事には、大きく分けて「絶縁工法」と「密着工法」の2つの工法があります。
国土交通省が監修する「公共建築工事標準仕様書」の中で、X-1工法が絶縁工法、X-2工法が密着工法として仕様が規定されています。
X-1工法 絶縁工法（通気緩衝工法）
絶縁工法は、下地と防水層の間にシートで緩衝層を設ける工法です。絶縁シートは下地から浮き上がる水分を遮断し防水層への悪影響を軽減する役割があり、劣化が進みコンディションの悪い状態からの防水改修工事に適しています。
密着工法に比べて工程も多く、使用する部材も多くなるためコストも高くなりますが、下地との密着性が低い場所や、既存の防水層の上に重ねて施工する場合に適しています。
また、絶縁シートがあることによって下地や建物の躯体が動いても防水層が追随しませんので、耐久性を高める要員になります。
絶縁工法は、別名を「通気緩衝工法」と言います。これは、絶縁シートと既存下地の間に溜まる水分を逃がす必要があるため、専用の脱気筒を取り付ける必要があるからです。水分は脱気筒から水蒸気となって外気に放出されますが、これが無いと防水層が膨れてしまい寿命を大幅に縮めてしまいます。
【絶縁工法の施工手順】
①高圧洗浄
②絶縁シート敷設
③脱気筒設置
④プライマー塗布
⑤ウレタン防水塗料塗布
⑥トップコート塗布
X-2工法 密着工法（メッシュ工法）
密着工法は、既存の防水層の上にメッシュ状の補強布を貼り付け、その上にウレタン防水材を重ねて塗布する工法です。既存防水との密着性が高く、厚い防水層を形成しますので、比較的コンディションの良い防水の改修に適している工法と言えます。
密着工法は下地処理が非常に重要で、仕上がりを大きく左右します。下地処理が不十分な場合、ひび割れや浮きなどのトラブルが早期に発生してしまい、寿命を大幅に縮めてしまうでしょう。
【密着工法の施工手順】
①高圧洗浄
②下地補修（脆弱箇所の除去）
③プライマー塗布
④メッシュ敷設
⑤ウレタン防水塗料塗布
⑥トップコート塗布
FRP防水工事の施工手順
FRP防水工事は、日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説」で「L-FF仕様」として規定されています。
伸び縮みの無いガラスマットを2層重ねることで、強固な防水塗膜を形成します。
【FRP防水工事の施工手順】
①プライマー塗布
②ポリエステル樹脂塗布（下塗り）
③ガラスマット敷設（1層目）
④ポリエステル樹脂塗布（中塗り）
⑤ガラスマット敷設（2層目）
⑥ポリエステル樹脂塗布（上塗り）
⑦トップコート塗布
防水塗装を長持ちさせる3つのポイント
防水塗装は大切な建物の雨漏りを防ぎ、長持ちさせるために非常に重要な役割を果たしています。
長持ちさせる3つのポイントを挙げますので、メンテナンスにお役立てください。
✅排水口の清掃は定期的に
屋上やベランダの防水には必ず排水口やオーバーフロー管があります。排水口が落ち葉や土砂などの飛来物で詰まってしまうと、豪雨のときなどにはプール上になり、最悪の場合は防水層を超えて水位が上がってしまいます。
そのような状況が発生すると、建物内に雨漏りを引き起こすだけでなく、防水に大きな負担が掛かり寿命を大幅に縮めてしまうことにもなりかねません。
排水口やオーバーフロー管は定期的にチェックし、ゴミなどが詰まっていたら除去するように心掛けましょう。
✅トップコートの塗り替えは早期かつ計画的に実施
一般的に防水層の寿命は10〜20年とされていますが、防水を劣化させる一番の要因となるのは直射日光による紫外線です。この紫外線から防水層を守るのが、表面仕上げに塗布されるトップコートです。
5〜6年に一度、劣化予防的にトップコートを塗り替えることによって防水層の寿命を伸ばすことが可能です。
防水層の劣化が進んでからの改修工事には多額の費用が掛かってしまいますので、トップコートの塗り替えは早期かつ計画的に実施するようにしましょう。
✅劣化のサインを見逃さない
防水層は年月とともに劣化していきますが、劣化の進行には段階的な兆候が見られます。
この劣化サインを放置すると、雨漏りや建物の構造材の腐食など、深刻な問題を引き起こす可能性があります。
このようなトラブルを未然に防ぐために定期的に目視点検をし、気になる点が見られたら早期に専門工事業者に相談するようにしましょう。
【防水塗装の劣化サイン】
・表面の色褪せ
・水たまりの発生
・コケやカビ、藻の発生
・表面の膨れや剥がれ
・表面のひび割れ
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