モルタル外壁の特徴やメンテナンス方法を解説
2023/10/25
現在でも多くの家屋で使われている建材として「モルタル外壁」があります。
モルタル外壁はひび割れが起きやすい素材なので、その特徴やメンテナンス方法を理解しておくことが必要です。
この記事では、モルタル外壁の特徴やメンテナンス方法について解説します。
モルタル外壁の特徴
「モルタル」は、昔から住宅の外壁として使われてきた素材です。
モルタル外壁は、防水シートを張ったラス板の上に金網を固定し、それを土台にしてセメントと砂を混ぜたペースト状のモルタルを塗り外壁にします。
モルタルは外壁の他にも、レンガやタイルの接着剤や目地材として使われることもあり、建築では非常によく使われる素材です。
モルタル外壁の種類
モルタルは、仕上げ方によって種類や特徴が異なります。
ここでは、モルタル外壁の種類について解説します。
リシン仕上げ
「リシン仕上げ」は、モルタル外壁の中でよく使われる仕上げ方です。
リシン吹き付けとも呼ばれていて、セメントに小さな砂利や砂、樹脂を含む塗料を混ぜたものをスプレーガンで吹き付けて、ざらざらした表面を作ります。
また、表面をブラシや尖った部材で引っ掻いて粗く仕上げる「リシン掻き落とし仕上げ」という方法もあります。
リシン仕上げはコストがリーズナブルですが、凹凸の隙間にコケなどの汚れが溜まりやすく、ひび割れが起きやすい点がデメリットです。
そのため、リシン仕上げではひび割れを防ぐために、衝撃に対して柔軟に動いて割れを防ぐ「弾性リシン」が使われることがあります。
スタッコ仕上げ
「スタッコ仕上げ」は、スタッコ吹き付けとも呼ばれていて、セメント、合成樹脂、骨材を混ぜて、専用のスプレーガンで吹き付けたり、コテやローラーなどで塗ったりして作ります。
リシン仕上げと同様に、弾力性のある「弾性スタッコ」も使用されています。
他にも、表面を加工せずに仕上げた「吹き放し仕上げ」、乾かないうちにローラーで表面を押さえて加工する「ヘッドカット」などがあります。
スタッコ仕上げの外壁は厚みがあり、重厚感のある外観になるのが特徴です。
ただ、リシン仕上げよりも凹凸の大小が激しいため、汚れが入り込むと除去しにくいというデメリットがあります。
また、スタッコの凹凸が塗料の乾燥を阻害するため、塗膜の強度にムラが生じるリスクもあります。
そのため、スタッコ外壁の塗り替えでは、シーラーと呼ばれる下地材で凹凸をしっかり保護することが推奨されています。
吹き付けタイル仕上げ
「吹き付けタイル」とは、1枚ずつ組み合わせる磁器タイルではなく、タイルガンという機械で作ったランダムな模様があるモルタル外壁を意味しています。
吹き付けタイル仕上げは、「ボンタイル仕上げ」「複層模様吹き付け」と呼ばれることもあります。
吹き付けタイル仕上げは、リシンやスタッコよりも不規則な凹凸を作ることが可能で、凹凸の調整は吹き付けガンの口径で調節することができます。
吹き付けタイル仕上げでは、合成樹脂が加わるため、つるつるとした陶磁器のような見た目になり、水を弾きやすいのが特徴です。
さらに、「弾性タイル仕上げ」を選ぶことで、ひび割れに強く防水性も備えた外壁にすることができます。
パターンローラー仕上げ
「パターンローラー仕上げ」は、凹凸が付いたローラーで、モルタルの表面に模様を作る仕上げ方です。
選んだローラーの凹凸により好きなパターンを作ることが可能で、渦巻き状や格子状といった定番の模様から、粗く不規則な手作業風の線、花柄、蝶といった特殊な模様のローラーも存在します。
左官仕上げ
「左官仕上げ」は、左官職人がコテやくしなどを使って外壁表面に模様を作る仕上げです。
左官仕上げは、四角いコテの角を使って作る「スパニッシュ仕上げ」、縞模様を櫛で引っ掻いて作る「クシベラ仕上げ」、コテを車のワイパーのように動かして作る「扇仕上げ」などが有名です。
左官仕上げは、左官職人の技術により仕上がりが影響されるため、職人の施工事例をあらかじめ確認しておく必要があります。
モルタル外壁のメリット・デメリット
ここでは、モルタル外壁のメリットとデメリットについて解説します。
モルタル外壁のメリット
窯業系・金属系サイディングボードやガルバリウム鋼板を使用する場合は、パターンや色が既に完成されているため、既存のパターンからデザインを選ぶ必要があります。
モルタル外壁の場合は、現場で職人の手によって作られるため、デザインを自由に選ぶことが可能です。
また、表面を好みにアレンジできるだけでなく、複雑な形状の壁でも自由に施工できる点もメリットと言えます。
サイディングボードやガルバリウム鋼板の場合は、目地の形状が複雑になると、その形に部材を加工する工事費用が発生し、工事期間も長くなってしまいます。
モルタルはペースト状であるため、どのような形状の外壁にも施工することができます。
モルタル外壁のデメリット
モルタル外壁のデメリットは、ひび割れが起きやすいという点です。
ひび割れの主な原因には、紫外線によるダメージや浸水などがあり、そのほかにも、地震や強風、地盤の劣化による建物の揺れや歪みなども、ひび割れの原因になることがあります。
また、モルタル外壁は吸水性が高く内部で水分の移動が起きやすい素材です。
そのため、雨水や湿気を吸水しやすく、ひび割れや強度の劣化につながることがあります。
モルタル外壁の劣化症状
ここでは、モルタル外壁の劣化症状について紹介します。
劣化症状を知っておくことで、モルタル外壁の劣化状況について確認することができます。
クラック
クラックとは、ひび割れのことです。
クラックの種類によって、補修方法が異なるため、クラックの種類や原因、処理方法の違いを理解しておく必要があります。
ヘア―クラック
ヘア―クラックとは、モルタルの水分が乾燥した時の収縮によって発生する、0.05~0.3mm未満の小さいひび割れのことです。
ある程度の年数が経過しているモルタル外壁で、比較的多く見られる症状です。
モルタル外壁は、約0.7mmの厚みがあるため、0.3未満のヘア―クラックが発生しても、すぐに外壁の構造まで害を及ぼすことはありません。
ただ、ヘアークラックが外壁全体に同時に発生している場合は、ひび割れが進行するリスクがあるため経過観察が必要です。
ヘアークラックの補修は、特別な補修材は必要なく、塗装だけで完了します。
構造クラック
構造クラックとは、外壁や建物の構造部分まで届いているような、0.4mm以上の深いひび割れのことです。
構造クラックは、塗膜を通り過ぎてモルタル内部の防水シートまで達している恐れがあります。
そのため、雨水が浸水すると、モルタル下地のラス金網の腐食の原因となったり、クラックからシロアリなど湿気を好む害虫が侵入したりして、外壁の強度を大きく落とす可能性があります。
構造クラックの補修は、ひび割れの部分をV字に削り、シーリング材を充填したあと、追従性の高い弾性塗料で保護します。
▷外壁のひび割れは放置すると危険!ひび割れが起こる原因とメンテナンス方法
エフロレッセンス
エフロレッセンスは、白華(はっか)とも呼ばれています。
これは、モルタル外壁の表面に白い粉が付着する現象です。
モルタルの強度が落ちているわけではなく、表面を洗浄することで目立たなくなります。
モルタルには水酸化カルシウムが含まれていますが、内部に浸水した雨水と反応することで、水酸化カルシウムが雨水と一緒にモルタルの表面に溶け出します。
その結果、水酸化ナトリウムを含む水分が、空気中の炭酸ガスと結合し、炭酸カルシウムとなって外壁表面に白い粉となって付着します。
エフロレッセンスは、水分が蒸発しやすい夏場はあまり発生しませんが、気温が低い冬場や、雨が多く湿度が高い梅雨などに多く発生します。
モルタルの浮き・剥がれ
モルタルは、内部に浸水した水分や、外部からの強い衝撃、構造クラックの放置などが原因で、モルタルの付着力がなくなり浮き上がってしまうことがあります。
浮き上がったモルタルが剥がれてしまうと、外観が悪くなるだけでなく、外壁を保護することができなくなるなど、さまざまな症状を引き起こす恐れがあります。
浮いてしまったモルタルは、ピンを打ち込んで下地材と固定し、エポキシ樹脂などの接着剤を注入して補修するピンニング工法などが行われます。
モルタルが完全に剥がれてしまった場合は、下地のラス金網や防水シートも腐食していることが多いため、下地の補修も再塗装とセットで行われることがあります。
カビやコケ
湿度が高い場所にあるモルタル外壁は、カビやコケが発生することがあります。
カビやコケは、すぐに耐久性に影響することはありませんが、外観が悪くなり衛生的にもよい状態ではありません。
モルタル外壁のメンテナンス方法
モルタル外壁のメンテナンスは、業者に依頼するのが一般的です。
ただ、ヘアクラックなどの軽度の劣化症状で、梯子や脚立を使わなくて施工できる範囲であれば、DIYでもメンテナンスが可能です。
ただし、DIYでは塗りムラができたり、重大な劣化を見落とす危険性があるため、あまりおすすめできません。
あくまで応急処置と考えておきましょう。
モルタル外壁のメンテナンスでは再塗装を行います。
再塗装は、変色・カビ・チョーキングなど軽度の劣化症状の場合に施工します。
外壁を洗浄して養生する
モルタル外壁には細かい汚れがついているため、塗装の前に落とさなければなりません。
まずは、濡れた雑巾や柔らかいスポンジなどで軽く表面を擦り、外壁を綺麗にしましょう。
高圧洗浄機がある場合は、塗膜が剥がれないように軽い力で使います。
また、給湯器や窓など塗料で汚したくない場所には養生をしておきましょう。
下地(フィラー)を塗る
下地を塗ることで、その上から重ねて塗る塗料と外壁の密着力が高まるため、塗膜が剥がれにくくなります。
また、下地を塗らないまま塗料を塗ると、塗りづらく塗りムラができるため、下地は必ず行いましょう。
塗料を塗る
下地が十分乾燥したら、その上から塗料を塗ります。
刷毛やローラーを使うと、初心者でも簡単に塗ることができます。
塗料は種類によって特徴やメリット・デメリットが異なるため、商品をよく調べてから使いましょう。
防水塗料スプレーを吹きかける
塗料の防水機能を高めたい場合は、塗料が乾いた後に防水スプレーを吹きかけます。
スプレーは塗り広げる際にムラになりやすいため、均等に塗るように注意しながら使ってください。
まとめ
ここまで、モルタル外壁の特徴とメンテナンス方法について解説しました。
モルタル外壁は費用が安く施工しやすいという特徴がありますが、ひび割れしやすいというデメリットがあります。
モルタル外壁のメンテナンスはDIYでも可能ですが、劣化症状がひどい場合は補修を業者に依頼するようにしましょう。